abe pottery studio nooc

2022/02/15 13:43


いつもの「個展のおしらせ」なのですが、
今回は普段の個展とは内容が異なります。
食器類の展示はありません。



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私個人で制作しているのは年間2000点くらい、食器を中心に制作しています。
私含め工房全体では小品まで含めると大体月に700〜800点、
年間だと8000〜9000点制作している計算になります。

独立したのは2013年の春で、初めの1年くらいは笠間の古い民家の六畳間で一人で制作していました。
1年目の終わり頃に大きな仕事(数量的に)が入りました。
一人ではさすがに手に負えず、その頃初めてアルバイトを制作の補助として雇い、制作を手伝ってもらいました。
私自身は生活のために家庭教師や福祉施設でのアルバイトをしているのに、アルバイトを雇っているというフシギな状況でした。

その後すこしずつコンスタントに個展や注文が入るようになり、
スタッフも少しずつ増えていきました。



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独立して数年やってみて感じたのは、私は爆発的かつ独創的な個性を持った作家ではないということ。

周りを見渡せば、作り手から見ても圧倒されるような作家性を備えた作家がいます。
私は手先は器用なほうかと思いますが、残念ながら作家性では彼らに敵いそうにありません。
このことに気づいてしまったのは結構ショックなことではあります。

しかしながらスタッフも私も生活していかねばなりませんから、制作の手は止められません。
スタッフと制作していくうちに、私自身は個人作家というよりは少数で構成したチームのなかで制作したほうがチカラを発揮できるタイプかも。と思い始めました。
それからは周りと同じように個人作家を目指すのをやめ、
笠間でちいさな陶磁器メーカーのようなものができないかと目標をシフトしていきました。

根底にはやはり焼き物が好きで、焼き物の仕事がしたいという思いがあります。
でも全員が私も憧れたような「陶芸家」になれるわけではない。
焼き物の世界で生き残るための選択でもありました。



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思い返せば独立以来、私の制作は数との闘いでもありました。
いつまでに◯点納品しなきゃいけないとか、どんどん出来上がってくる素地を焼いていかなくてはいけないし、工場長もタイヘンです。
メインで使用しているガス窯の窯焚きは年間100回くらい、今でも私が全て焚いています。

そんな折、2,3年前からギャラリーやキュレーターの方から
「工房としてではなく、個人での作品を見てみたい」というご依頼をいただくことが出てきました。
音楽で言うところのグループからのソロ活動みたいなものでしょうか。

私自身、元々は個人作家を志していました。
自身の能力や適性から選んだ現在の分業制作スタイルですが、
やっぱり内面で燻っていたものが無かったわけではありません。
なかなか0か100かと割り切れるようなものでもないような気もします。



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19歳の頃から大学のサークルで食器だけを作ってきました。
今展は食器では少し扱うのが難しいかな、いうテクスチャーの陶板や大型の花器、オブジェなど30点のみの展示です。
テーマは「layer」としました。
制作していく中であまりテーマを設けることはないのですが、今回は自然とこの言葉が浮かびました。
カタチを作るのも表層のテクスチャーを作るのにもいくつかの層によってできています。
制作自体もいろいろな経験の積み重ねから影響を受け変わっていくものだと感じます。

普段の食器制作から離れ、いま一度個人作家としても制作する時間を作り
焼き物自体を見つめ直したいと思います。
ここ2ヶ月くらいの窯では失敗と発見の連続でした。
サークルで焼き物をはじめたころってこうだったなと思い出しました。

個人作家とチームの両輪で進むのか、
それともソロ活動の中で得たものをチームに還元できるのか。
今年はちょうど独立して10年になる年です。
次の10年に向け、普段のチームでの制作と並行して個人としての制作もはじめていこうと決めました。

まだまだ粗削りな部分はありますが、二度目の初個展だと思って作品を送り出しました。
ぜひお出かけくださいとは申し上げにくい状況ですが、
お近くで御用の際はお立ち寄りくださいますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。



阿部慎太朗 陶展 “layer”
2022.2.17(木)-28(月)
11:00-18:00
アルフレックス 大阪















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