abe pottery studio nooc

2024/06/01 22:54

あっという間に5月も終わり。

天気予報を見るともうすぐ梅雨入りかなぁと思わせるような曇りマーク。
こちらでのおしらせが遅くなりましたが...。

柏の萬器さんでの個展のおしらせです。
萬器さんは今年で開店30周年を迎えられたそうです。
萬器さんは柏本店と北千住の2店舗を構えています。
今回は柏本店での開催です。



30年前はまだインターネットも一般には普及していなかった頃。
私は小学生低学年でしたが、その頃から今日まで続けてこられたということなんですね。

私が陶芸や器というもの興味を持ち、作り始めたのが20年前です。
19歳の阿部青年から39歳の阿部おじさんまで。
この20年を振り返っても工芸を取り巻く環境は大きく変わりました。

変化の要因はやはりSNS(インスタグラム)が大きいのかなと思います。
ほとんどの方がSNSをご覧になって個展等に足を運んでいただいているような体感です。
もちろん通りすがりでご興味を持ってくださる方もいらっしゃいます。

私が独立したのが2013年。
その頃はブログだったりDMハガキで個展のおしらせをする方が多かったです。
インスタが普及してからはインスタで告知したり、
国内外のお店からお取引のお申し出をいただいたり、
お客さまともお取扱店ともインスタがハブになっているようなかんじです。

正直、インスタをやっていないと仕事にならない。
と言っても過言ではないのでしょうか...(知ってもらえないし、情報も入ってこない)
押しも押されもせぬ大御所は別として、
キャリアの浅い作り手にとっては標準装備のひとつになっているように思います。


+ + + + +


ただ、インスタにも良し悪しがあるなぁとここ数年日々感じています。

視覚からの情報というのは非常にインパクトがあり、
他の作家さんが作っているものや陶芸以外の他ジャンルのものからの表面的な影響をとても受けやすくなりました。
端的に言ってしまうと作風をパクってしまう、ということです。
誰しも何かから影響を受けるのは仕方がないことではありますが、
あまりにも手軽にできてしまうため、◯◯さん風のものが短期間で増えたりします。

他には写真が上手すぎて、実物よりも3割増しに見えてしまい、
実物を目の当たりにするとなんか思ってたのと違うなぁと思ったり。
(まぁこれは勝手に写真で見えない部分を頭の中で自分の理想形で補填していただけかもしれません)

お店とのお取引もインスタのメッセージからはじまり、
一回も会ったことない状態からスタート。
販売され、売れ残ったのが戻ってきて入金されて終了、みたいななんとも味気ないものもありました。
選り好みできるような立場ではないのでスケジュールが空いていれば受けますが。。


+ + + + +


以前はお店を介さないとなかなかお客さまと繋がれませんでしたが
今は作り手とお客さまが直接SNSで繋がっていて、
お店の存在意義とは...というのも同業者間ではよく話題になります。
実際にお店との取引を辞めて、全て自分で直販している作家さんもいます。
そのほうが身入りがいいのは間違いありませんし、
自分のペースで展示会や販売のタイミングを設けることもできます。

私自身はこれまでお店(特に器の専門店)での個展、というのに軸足を置いてやってきたつもりです。
お店の方の眼を通して販売することに意義がある、と考えているからです。
ある種のジャッジを受けるというか。
(器作家の場合、公募展やコンペと違い審査というのはありませんからね)

その眼はわかりやすい言葉で言うと審美眼ということになるのかと思いますが、
お会いして、お話して、お店に実際に行ってみて
審美眼を持っていると感じたら作り手としては安心してお取引ができます。
あとは人間同士ですからね、相性というのもあると思います。


+ + + + +


SNSの普及で作り手もお店も増えました。
本当に増えたと思います。
スタートするハードルはグッと下がっていると思います。
スマホ1台で情報は世界中から。
国内外の作り手とお店、使い手がつながりやすくなり、
オンラインショップは無料からスタートできます。
広告も数百円から出すこともできます。
もちろん私もその恩恵は多分に受けています。

でもこれからは淘汰の時代だと思っています。
私自身は生き残りたい(作り続けたい)という危機感からか、
新しい素材の実験やこれまで定番としていたものを見直したり、外に学びに出かけたり...
少しザワザワしたものを感じつつ、目の前の制作に取り組んでいます。

これからの10年がどうなるのかは誰にもわかりませんが、
少なくとも作り手もお店も変化は求められるのではないでしょうか。
変化することで生き残る道を探りたいと思っています。
萬器さん30周年に触れて、私のわかる範囲(この20年)での工芸の変化について。


※萬器さんDMに寄せる言葉として、『工芸の30年について』というお題をいただいていました。
数行でまとめるのは難しく...こちらに掲載しました。




newsletter

次回OPENの日程や展示のお知らせなどの最新情報をお届けいたします。